クローム調・ゴールド塗装で帝騎マグナパレスを再現!プロモデラー・コボパンダ氏が徹底解説します

こんにちは!企画・開発担当のK_NAGAMIです。
今回は先ごろ発売となったレジンキット「1/100 帝騎マグナパレス ザ・ナイト・オブ・ゴールド」をプロモデラー・コボパンダさんに作例を手掛けていただきました。
クローム調の金色塗装も字数制限なしで徹底解説していただいてます。是非、参考にしてみて下さい。

 


1/100 帝騎マグナパレス ザ・ナイト・オブ・ゴールド

製作・文:コボパンダ

アワートレジャーのFSSガレージキット、主役騎の帝騎マグナパレスを製作させて戴く事になりました、コボパンダです!
普段は模型誌のライター、商業原型の磨き、彩色等をお仕事にしております。よろしくお願い致します。
原型製作のSyujyu氏から展示会で「塗ってよ」と言われて即了承するくらい、こちらの帝騎マグナパレスのインパクトは凄いものでした。
スマホの画面からも伝わってくる密度の濃さ、バランス、何より憧れのGTM、それもダントツの主役騎。
お仕事に携われる嬉しさよりも、責任感の重さと、何より「これ、塗れるの?」という不安感が大きかったです。そしてそれは後々的中する事に…

 

ガレージキット製作についての注意点

ガレージキット製作の注意点などを少し書き出しておきます。本製品はRCベルグ社から型製作、生産されており品質は非常に高く、高精度となっています。
ですが、パーティングラインやバリ、微細気泡等は必ず出てきてしまい、加えて複雑な造形なので、綺麗に作るにはかなりの時間が必要となります。根気よく毎日少しづつ進めて頂ければ幸いです。
パーツのズレ等は、ほぼ無いのでパーティングラインは400〜600番の紙ヤスリで表面をなぞるように削っていけば消えていきます。
少々手こずったのはベンダーウィグ(頭部後ろの赤いパーツ)、薄く長いパーツなので少しズレがあったのと、パーツ自体がドーナツ状に穴が開いているので、そのパーティングラインの処理が少し手こずると思います。
ズレの修正も微々たる物なので、瞬間硬化パテ(GSIクレオス Mr.SSP 瞬間接着パテ)を盛って削ることで作業効率を上げました。
微細気泡はシアノンDW(瞬間接着剤)をケガキ針の先にちょこんとつけて1つずつ埋めて行きました。気泡自体も少ないキットなので、目視で出来る範囲は事前に埋めていく方が、後々の作業に響かないためです。
ガレージキットの特性上、どうしても曲がり、反り等は見られます。先述したベンダーウィグ等もパーツ自体が反っているので、厚めのアクリル板(なかったらプラ板)にパーツを固定して、熱めのお湯に浸して曲げを修正しました。
バスターランチャーも仮組みの際少しハメづらかったので、こちらも大きいパーツを組んだ後にお湯に漬け込んで修正しました。

 

仮組み

パーツを処理しつつ、仮組みをしていきます。
こちらもキットのダボがしっかりしているので苦労する所はほぼないのですが、強度上どうしても不安になる所(展示会等の輸送時の脱落などです)があるので、ほぼ全てのパーツに真鍮線を通して強度を確保しました。
胴体や脚部等の太い部分には1.5ミリの真鍮線を2本、その他の細かいパーツには1ミリの真鍮線をダボ部分に仕込んでいます。
原型製作のSyujyu氏から教えて頂いたのですが、頭部の内側の頬当てはできるだけ下すぼまりにならないように、腰のサイドアーマーは奥までハメ込まないで少し広げるように組むとさらにカッコよくなるそうです。これはお得な情報ですね(笑)

 

テラクローム

帝騎マグナパレスの塗装、Syujyu氏が彩色の監修時に永野先生から提案して頂いたのが、「クローム調仕上」(≒金メッキ風塗装?)との事でした。
シルバーやゴールドの上にクリアカラー塗布し、それにより透き通った塗布面と光沢感を出せるのがキャンディー塗装ですが、これでは塗面が鏡のように反射しなく、メッキ塗装とは少し違う…
との事で試行錯誤した結果、行き着いたのがSHOW UPのテラクロームでした。こちらの塗料、非常に優秀で下地をきちんと作りさえすればほぼ確実にメッキ感を出せるという物です。

(画像協力:SHOW UP)

個人的なコツですが、やや圧は少なめにしてフワッとかけるようにし、一回塗ったら少し乾燥、それを3〜4回にわけて塗布するという感じでした。
その後は、しっかりと乾燥させ(1日ほど)上掛けのラッカーに備えます。

 

大失敗の果て

冒頭の「これ、塗れるの?」の伏線回収です。
テラクローム後のラッカーは非常に上手くいきました。テラクロームは通常のキャンディーのように上から塗れるので難易度としては低めです。
ですが、ここで問題が。なぜか塗装面が一部曇ってしまいました。テラクロームの上からラッカーを吹くと少し白曇りしてしまうのは先人の知恵で理解はしていたのですが、ちょっと鏡面とは言えない感じに。オーダーの通りではないので、パーツを下地からやり直していきます。
パーツのやり直しをして、失敗したパーツを鏡面にした所で、他パーツの違和感に気づきました。
5日間ほど放置した完成済みパーツに微細なクラックが出てきてしまいました。

※微細なクラックの発生例画像(画像はテストピースパーツへ塗装したものです)

総数にしてほぼ1/3、ガラスを粉々に割った時のようなクラックでした。
原因はまだ定かではないのですが、原因となるのかな?というものを箇条書きにしておきますと

①ディテールを生かしたいために下地を黒サフ→ボーンペイントのアンダーブラックにした
②テラクロームを薄めに吹いてしまった部分があった
③テラクロームの後、乾燥機にずっと入れておいた
④ラッカーの色調を調整しやすくするため、溶剤で薄めすぎた

これらのどれかに原因があるのか不明ですが、個人的にはの効果が合わさった結果かなと考えております。
要素が重なってクラックという症状が起きてしまったのですが、これらの要素を少なくしておけば、より良い物に繋がると信じて再スタートです。
ちなみに塗料の落としはクアトロポルテのウォッシュシンナーを使用しました。装甲パーツほぼ全部ですので、全部綺麗に落とすのに500ml缶一本使いました(涙)

 

再スタートの末に金メッキ塗装完成

せっかく全部やり直すので、ラッカーによる若干の曇りもなくしてよりメッキ調に近づけようと思考しました。試行錯誤の結果たどり着いたのが、ボーンペイントのフィニッシュクリヤシリーズです。
メッキへの侵食が少なく、テラクロームの上から塗布する事でほぼ確実にメッキ調にすることができます。こちらを調色することで、Syujyu氏の仰っていた「赤金にも青金にも見える金」を目指しています。
調色方法は後述しますので、ご参考下されば嬉しいです。
このフィニッシュクリヤも少し扱いが難しいのですが、吹きつけ自体は簡単です。個人的にこういう方法で塗ったというメモ書きがありますのでそちらを記載させて頂きます。

〜フィニッシュクリヤ吹きつけのメモ〜

①専用強化剤は1割ほど入れる
②全体的に遠吹きで良い(乾燥時間がとても長いので)
③近くで吹きすぎるとすぐに垂れるため、ディテールの奥まった所から吹きかけていく
④時間がたった強化剤入りの液使わない(2時間ぐらいは大丈夫)
⑤ラッカー下地、ウレタン下地どちらでも下地が命。ほぼやり直しは効かない。失敗したら潔くドボン
⑥薄め液は極力使わない方が良い。
⑦乾燥は数日かかるので暗所に放置する。
⑧乾燥中は蛍光灯など光強く直接あたる所には、置かない。色が退色してしまう可能性がある(クリアイエローの場合のみ確認)

こんな感じでまとめてみました。
ラッカー塗料とはまた違った物ですので。実際に使う時はテストピースなど数度試してみても良いと思います。
テラクロームも先述した失敗を元に、下地を変えてみました。ディテールが少しユルくなるのを覚悟して、グレーサーフェイサーの上からウレタンクリア(2液性)を塗布し、十分に乾燥させたあとテラクロームを塗布しています。
ウレタンクリアは厚みが出てしまうため、ダレないように注意しながら、数度にわけて十分な光沢が出るように塗布していきます。
テラクロームを塗布した後は、その塗面は絶対に素手で触らないようにし、埃等に気をつけながらクリアカラーを塗布して金メッキ塗装完成です!

 

その他の塗装、そして完成へ

フレーム色はSyujyu氏に教えて頂いた、クレオス GXレッドゴールドにガイアノーツカラー203 レッドブラウン、少しだけスターブライトシルバーを足して調色しました。
ベンダーウィグは監修時のお話で、メッキ塗装に対してメリハリが欲しい。との事だったので、つや消しにしております。
下地にGXメタルレッドとGXメタルブルーを少量混ぜた、ほんの少し青みがかったメタルレッドを吹き付けた後、クリアで割ったガイアノーツ クリアレッドを遠吹きすることにより、自然な感じのフラットメタルレッドにしました。
ホワイトはクレオスのGXホワイト。金メッキ塗装の上からマスキングしても大丈夫かな?と慎重にテストしましたが、問題なさそうでした。専用強化剤がかなり効いていると思います。
各種墨入れは金メッキ塗装部分がタミヤエナメル レッドブラウンに少量のブラック、
フレーム部分は墨入れ塗料ブラックに少量のダークグレーを混ぜて、かなり暗い色のグレーを作りました。
レッド部分はエナメルのクリアレッドで墨入れしました。
組み上げはゼリー状瞬間接着剤とエポキシ系接着剤を併用しております。
強度と粘りが欲しい所にはエポキシ系、細かいパーツなどはゼリー状瞬間接着剤と、瞬間硬化スプレーで強度を確保しました。

 

塗装レシピ&終わりに

クローム下地=グレーサーフェイサー後、2液性ウレタンクリアー その上からテラクローム

金メッキカラー調色=フィニッシュクリアイエロー 20ml + レッド 1.2ml + ブルー 0.2ml

フレーム色=クレオスGXレッドゴールドガイアノーツカラー203 レッドブラウン 2対1ぐらいの割合で、そこにスターブライトシルバーを足す

メタルレッド=クレオスGXメタルレッドGXメタルブルーを少量足して下地を作り、その上からガイアノーツ クリアーレッドガイアノーツ Ex クリアーを遠吹きで吹きつけて、ツヤ消しホワイト=GXクールホワイト

各種部分塗装
クレオス 水性塗料を使用し、吹きつけ後拭き取り

以上となります。途中の失敗はあったものの、思い切ったやり直しと再研究で、形にする事が出来ました!
これもガレージキットならではのやり方ですね。
失敗したらドボンしてやり直せるのがとても嬉しいです。
相談にのって頂いたSyujyu氏、納期遅れてもいつも励まして頂いた永見氏、本当に感謝しております。
できればたくさんのモデラー様に、この素晴らしい造形の帝騎マグナパレスを見て頂き、お手元に届いてキット製作して頂ける事を願います。
ここまで読んで頂きありがとうございました!!

 


 

以上、コボパンダさんによる 『1/100帝騎マグナパレス ザ・ナイト・オブ・ゴールド』作例記事でした。

本製品をご注文いただいた方には概ねお届けできたころかと思いますので、是非、今回のコボパンダさんの作例記事を参考・活用していただければと思います。宜しくお願い致します。

最後にアワートレジャーでは、今後も続々とGTMをキット化予定です。ご期待ください!

K_NAGAMI

©EDIT

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