マシンメサイア・オージェの完成見本制作について

製作・文:松本 尚文

初めまして、の方が大多数だと思います。
フィニッシャーをやっております、松本と申します。
今回、アワートレジャーのSyujyuさん原型「マシンメサイア・オージェ」完成見本制作を担当させて頂きました。
加えてブログ用に製作記事を、との事で少しこちらにお邪魔致します。

■キットについて
すでに多くの方が 各種イベント、ツイッター、アワートレジャーの公式サイトなどで、スミ入れのみ施されたものと彩色された完成品をご覧の事と思いますが、ここで改めて語るまでもなく素晴らしいキットに仕上がっています。

1/100という数字から想起するよりも、実物を目にし、手に取ったときのボリューム感はかなりのもので、パーツを眺めるだけでも満足感は相当なものになると思います。

既に注文された方、そうでない方も含めて気になるところだと思いますが、パーツ数は240超、その内、2種類のスロウランサーが50パーツ超、といったところです。
どうでしょう?
見た目の豪華さとボリュームの割には抑えられたパーツ数、と感じられるでしょうか?

まあ少し多く感じるかもしれないスロウランサーの整形も、毎日5パーツずつ進めていれば10日で終わる計算です。
その他のパーツも含め、複製を担当されているRCベルグ様の技術の高さもあって、パーティングラインの位置やパーツ精度などは申し分ない仕上がりとなっています。

さて、パーツ数にも関わってくる部分ですが、パーツ分割が非常に良く吟味されていて、見た目ほどマスキングによる塗り訳が必要な箇所は意外と多くなく(リアスカート、サイドスカートの裏も意外と素直なマスキングで済むようになっています)、かといって組み立てが難しいとか、猥雑さを感じるような事もありません。

 

デザイン上、モーターヘッドを作る上で一番に気を使うと思われる下半身の組み立てですが、これがまた素晴らしく、股関節ブロックから爪先・ヒールまでほとんど悩むことなく、調整に手間をかける事もなく、手軽にガッチリ組上がります。
特に爪先~ヒールはワンパーツで構成されており(甲とかかと左右の装甲は別パーツ)、スネのフレームともガッチリした多角形のダボで(これがまたピッタリ)繋がるので変に歪んだりズレたりする事がありません。素直に組み立てられます。
(実は組んでいて構成と精度に感嘆したのは、かかとから伸びるアイゼン周りなのですが・・・ここでは語らずに置いておきます)

 

ここまで述べてきた下半身を含めて、各部のパーツの噛み合わせやラインの繋がりはデジタル原型の恩恵も色濃く感じました。
当然、そこには原型師であるSyujyuさんの培われてきた技術や感覚的な練度、まとめあげるセンスなどがあってこそなのですが。
組んでいて本当に迷いや無駄な工程を踏む必要がなく、どんどん組み立てられます。

 

続いて、上半身で気になる箇所と言えば、もちろん左右に張り出す大きなバインダーだと思いますが、こちらは肩から伸びるバインダーを支えるフレームと、吊り下げられるスロウランサーのラックから先端までの長大なフレームが、どちらもバインダー上部のメインブロックのフレームパーツで前後から挟み込まれるように構成されていて、各部最低限の軸打ちするだけで堅牢にカッチリ組み上がります。

 

外側、内側にそれぞれ懸架されるスロウランサーについては、数が多い事もありますが、仮組はしっかり行って、取り付け角度や、位置合わせを確認しておくと良いでしょう。 完成見本においては、内側(腕側)の両端のスロウランサー先端が、若干装甲と干渉してしまっていた為、付け根側で1mm程削って短くし、調整しています。

ちなみに、今回の塗装見本で軸打ちに使用した金属線は、そのほとんどがアルミ線です。一番太いものでも2mm径で、力のかかる部分に1.5mmを2本平行にセットにして捻じれを防いだり、残りは概ね1mmで、といった具合です。

なお、バインダーの組み立てについて、特徴的な前後の弧を描く装甲パーツとフレームとの取り付けの仮組は、その組み立て手順も含めて、くれぐれも入念にやっておきましょう。 塗装後の最終的な組み立ての際に思いの外苦労する事になりますので。

とは言え、完成後にはほとんど見えず、流麗で綺麗なラインを描き出すこのフレームと装甲の重なり具合は、実際に組んでみると見た目よりもずっと面白く、ちょっとした驚きとワクワク感の詰まった、「組んで楽しい部位」でもあります。 どうぞじっくり堪能しながら組んで下さい。

 

巨大なビームサイズ(鎌)は製品紹介ページにもありますが、柄の二本に真鍮線が仕込まれており歪む事無く保持させることができます。 単純にでかい!と思うのは、このビームサイズ部分であったりもします。

 

■塗装について
 オージェの特徴である装甲部分のクロームシルバーですが、各社からの様々なシルバー、メッキ調塗料などを検討した上で、今回はSHOWUPの「ハイパークロームAg」を選択、その中でも扱いが比較的容易で、ホビー用途向けに開発された「ハイパークロームAg 1K Kit」 を使用しています。

少々高価に感じるかもしれませんが、適正な方法で塗装し仕上げた際の鏡面反射の凄さは、これまでと一線を画すものがあります。
興味がありましたらまずは試してみるのが良いかと思います。
その際、普段使っているラッカー系の模型用塗料とは吹き付け感や、完全硬化(乾燥)に至るまでの工程が些か異なり、仕上がりが大きく左右されるほど重要になってきますので、必ず事前に、使用法や工程を確認、また解説された動画などを参考にされると良いでしょう。

 

ちなみに、オージェはボリュームもありますので、今回は実に6セットを使用しました。
ただ、吹き付け方の違いなどから、3本セットのそれぞれで使用量に差異が出てくる事もあると思います。
その場合、各色とも単品の扱いがありますので、それらと組み合わせるなど調整しても良いかもしれません。

さて、その「ハイパークロームAg」、実はAg本体よりも、下地のベースカラーブラック、コーティングのクリアーの取り扱いと仕上げの方が重要度が高い塗料となっています。

下地のベースカラーブラックは、色味としては真っ黒というより、濃いグレーという印象ですが、何よりここの善し悪しがストレートに仕上がりに影響します。
またベースカラーブラックが硬化(乾燥)していても、表面に触れるのは厳禁です(素手はもちろん、手袋など他でもできるだけ触らずに、次の工程のAg塗装に入るのが望ましいです。)
ベースカラーブラックを塗り始めたら、Agはもちろん、クリアコートが済むまで絶対に触れられない、と思っておくと失敗を防げます。

その為、意外と見落としがちな割に重要になってくるのが、塗装時の持ち手の取り付けです。
ベースブラックの塗装に入る前に、必ず持ち手とパーツ間のゆるみやグラつきのチェックはしておきましょう。 面積が大きくそれなりに重いパーツも少なくないので、ガッチリ取り付けておいた方が安心です。

また、塗装時にパーツを広げておけるだけのスペースの確保も重要ですね。
この点は全部を一気に塗ろうとせず、ある程度のパーツ群などに分けておいて、その一群を塗り上げてしまってから次のグループ、という様に、焦らず落ち着いて少しずつ仕上げていくのが吉でしょう。

加えて「ハイパークロームAg」セットの3種の塗料全てにおいて、きっちり硬化(乾燥)させる事が肝心になってきますので、慌てて塗るメリットは全くありません。じっくりと腰を落ち着けて、焦らずに確実に仕上げていく様に心がけると良いと思います。

続くメインのAg主剤ですが、こちらは模型用塗料のメッキ調塗料などと大差ない感覚で吹けると思います。
少しずつ少しずつ、全体にふわっと乗せていく感覚で、合間に乾燥時間を設けつつ、これを数度、発色するまで繰り返す。
メタリック塗料やパール塗料を扱い慣れているとこの辺の感覚は掴みやすいと思います。

なお、このAg主剤も同様にお触り厳禁です。 触れると素手であろうがなかろうが、一瞬で黒ずむので要注意です。

十分にAg主剤の乾燥時間を設けたら、トップコートクリアーの出番です。
こちらも公式サイトなどの説明にある通り、一回で吹き付けて終わらせるタイプの塗料ではありません。 砂吹きなどと言われたりするように、最初は吹き付けるというより、塗料のミストが表面に付着する程度にふわっとさーっと乗せ、これを2~3度繰り返して、概ね表面を覆います。 その後、またしっかり乾燥時間を設け、その後軽めに少ししっとりと覆うように吹き付け、最後にきっちりと吹き付けコーティングしてしまう、という感じです。 詳しくはSHOWUPさん公式の解説や動画でご確認下さい。
ツイッターでもたくさん動画や解説が上がっていますので、そちらをフォローされると良いかと思います。

フレーム部分のカッパーは、銅色、というよりは、カッパー寄りのゴールドというところを意識して調色しています。
こちらは通常の模型用ラッカー塗料を調色したものです。

 

下地にはガイアノーツのナチュラルブラウンを吹き付け、奥まった部分や、ディテール、影になる部分で一段色が落ちる(深くなる)効果を狙っています。
カッパーゴールドは、ガイアノーツのEx-ゴールドをベースに、画材のコピックのインク(蛍光色など)を滴下して色味を加え、雲母堂さんのVGパールラセットを多めに加えて、着色ではない赤味への調整と、光が当たった際の色変化を乗せています。

スロウランサーのラックのフレームパーツなど、一部のイエローゴールドの部分は、上記したカッパーゴールドの調色割合を変更したもので塗装しています。

 

装甲表面の涙滴型~楕円、一部装甲裏などの薄いイエローゴールドは、タミヤのエナメルカラーを調色して、大まかにマスキングした後、エアブラシで吹いています。
エナメル塗料なので、はみ出し部分や塗り分けの淵などはエナメル溶剤で拭き取ってシャープに仕上げています。

同じく、各部レッドの塗分けもエナメル塗料です。

スパイドの鞘部分のレッドについては、下地にカッパーゴールドを吹いたものにクリアカラーと純色で調色した赤色をオーバーコートして仕上げています。
クローム部分はその後にマスキングしてハイパークロームAgを使用しました。

なお、今回の完成見本では、マスク部の瞳周辺を除いて、一切スミ入れをしていません。
全身がほぼメタリック色なので、強調しなくても影が落ちる事、逆にスミ入れをする事で過剰にうるさくなったり汚くなってしまうことを避ける事、何よりも原型のディテールがシャープであるが故にスミ入れをしなくとも見栄えがする事、等々から必要が無いと判断した次第です。

とはいえ、これもまた個人の好みなどもあるでしょうし、スミ入れをするもしないもお好みで、楽しみながらされるのが良いと思います。

以上、いささか駆け足で解説?をさせて頂きましたが、オージェの魅力の1/10でも伝えられ、何かしらの一助になれば幸いです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 


 

松本 尚文(まつもと なおふみ)
モデラー/フィニッシャー  1978年生まれ 大分県出身。
●Twitter… @wotaru  

自分でも不思議に思うくらい、何年かの周期でこうしてモーターヘッドの完成見本を作らせて貰っています。 それにしてもツールや塗料もどんどん新しいものが出てきて、アレもコレも試してみたくなりますね。今回のハイパークロームAgも(オージェに限らず)ワンポイントでキラッと光らせてみるとか絶対面白いので、興味があれば是非是非。[松本]

 

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マシンメサイア・オージェ

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