プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン製作記』 ~その6~

こんにちは!企画・開発担当のK_NAGAMI(永見浩士)です。

岡島正晃による『1/20イプシロン製作記』の6回目。
今回はグラデーションについてのお話。
小さすぎてエアブラシでのグラデーション塗装が困難なところを、なんと筆塗りでグラデーションを再現する!とのこと。
レイヤリングという技法について、まずは塗装法を丁寧に解説いたします。


 

『1/20イプシロン』製作記』 ~その6~

製作・文:岡島正晃

グラデーション
どんな形にせよ目が仕上がったら、次の工程は顔。すでに塗った目を絶対に潰さないよう注意しながら、肌色をペイントしていきます。
ただ、これ以降の工程は、顔にしろ髪にしろ服にしろ、単に「その部分の色をペタっと塗っておしまい」ってワケには、いきませんで。

例えば完成画像の顔を見て頂くと、顎の下なんかは肌色ベースカラーのままなのに、鼻のてっぺんや顎先はほとんど白で、そのあいだには明から暗までの中間色が、くっきりした色の境目を見せないまま連なってますでしょ?
コレが、この手のミニチュア塗装の醍醐味である「グラデーション塗装」なんであります。

一体全体、なんでこんな面倒くさいことをすんのかって言うと、それは塗る対象が小さな模型だから。いま仮に、グレーのTシャツを着て椅子に座った自分を鏡で見たとすると、脇の下や腰まわりなどにできるシワの内側や下側は、ほかより暗いグレーに映っていることでしょう。逆に肩などの光が当たる部分は、白色光源下なら明るいグレーに見えますよね? ところが、そんな自分を1/20の模型にスケールダウンすると、深さ5cmのシワもたった2.5mmの凹モールドになってしまいます。そして悲しいかな、現実世界の光は、こんな浅いモールドに5cmのシワと同等の深い影は落としてくれません。
おかげで服と同じグレーをただ塗っただけでは、1/20の自分はなんだかノッペリ見えてしまうのであります。

ではどうするか? 答えは簡単、その深い影を「描いて」やればイイんです。しかもその影が、アニメのようにきっちり塗り分けられたそれじゃなく、現実のTシャツさながらに「ゆるく光が回り込むことによって、ダークグレー/ライトグレーと中間のグレーの境目がボヤけて見える」ようになってれば、サイズ以上の実存感が出せるって理屈ですね。

でまあ、本来この種のグラデーション塗装は、エアブラシの最も得意とするところなんですが、1/8ならともかく相手が1/20や/135、まして28mmなんてサイズでは、0.2mm口径でもちょっとムリ。ミニチュアペイントの技法や専用塗料は、いわばこれを筆塗りでも可能とするために、存在するのであります。

レイヤリング理想論
んじゃあ、こうしたグラデーションを筆でキレイに塗るにはどうしたらイイのか? 実を言うと、その方法論は多岐に渡るんですが、今回は私が主に用いている「レイヤリング」という技法をご紹介いたします。コートデアームズをはじめとするミニチュア専用塗料にも、非常に向いている塗り方です。

その段取りをざっくり言葉にすれば、「まず影になる一番暗い色を全体に塗り、次にちょっとだけ明るい色を、いま塗った色より光の当たる部分に塗る。以下繰り返し」ってところでしょうか。
イメージとしては、地図に描かれた「等高線」を思い出してください。全体にベースカラーを塗ったあと、一番「高度」の低い等高線より内側を少しだけ明るい色で塗り、続いて「ひとつ上」の等高線の内側に、さらにちょっとだけ明るい色を塗り(以下繰り返し)ってな具合。
よりわかりやすく説明するために、モールドを(地図の等高線のように上からではなく)側面から見た模式図を用意しましたので、ご覧くださいませ。

もちろん実際には、「黒からはじまって白まで」では明度差がキツ過ぎましょうし、凸モールドの向きによっては「上方向に開いてる側の斜面は明るい色の面積が増える」なんてコトもあります。厳密には「光が当たるところ」でなくても、強調したい部分にはあえて強めにハイライトを置いたりもしますしね。ですがともかく、塗装の段取りとしては、こういう具合であると。

と、いうコトは。この手法では「色の階調が多ければ多いほど」、即ち色の明度をちょっとずつ上げながら、「等高線」の間隔を密に塗っていけばいくほど、美しいグラデーションが完成する理屈になります。黒と青の2色ではアニメみたいですけど、上図のように9色重ねれば、より陰影が効いていて、かつスムーズなグラデーションに見えますし、それが20色、30色となれば、なおさらでしょ?
より作業の実態に寄せて言い換えるなら、「ある色と、明度差がわずかに異なる直前/直後に塗った色との境目が、くっきり判別できないように塗り重ねていく」のが、概念的には理想のレイヤリングってワケなのです。


 

以上、岡島正晃による『1/20イプシロン製作記』の6回目はここまで。
レイヤリング技法を理解したところで次回は実践編です。

動画を交えて、初めての方でも技法を習得できるようにしっかりと解説いたします。ご期待下さい!

 

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その7~ はコチラ

 

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その1~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その2~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その3~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その4~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その5~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その8~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その9~ はコチラ

 

K_NAGAMI(永見 浩士)

©サンライズ

コメントは停止中ですが、トラックバックとピンバックは受け付けています。