プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン製作記』 ~その5~

こんにちは!企画・開発担当のK_NAGAMI(永見浩士)です。

岡島正晃による『1/20イプシロン製作記』の5回目。
顔の基本塗装を終えたので、続いてフィギュア塗装でも特に重要かつ難しい『目』の塗装についてです。

初心者でも完成できるように、一つ一つ丁寧に解説しました。
是非ご覧ください。


 

『1/20イプシロン』製作記』 ~その5~

製作・文:岡島正晃


さて、ベースカラーが塗り終わった段階で、私の場合は一旦お肌を放置。そのまま目のペイントに入ります。「最後に顔ミスったらションボリ」と同じ理屈で、顔のなかでも難度の高い目を、先に描いちまおうというワケですね。

目の描き込みはミニチュアペイントで最も「難しそう!」と思われがちな部分で、事実そういう側面も無きにしも非ず……なんですが、怖がってても勝手に塗り上がってはくれませんし? 段取りと知識、そして少々の思い切りがあれば、失敗のリスクは減らせますんで、勇気を出して参りましょう! 以下、作業手順ごとに詳しくご説明します。

2:輪郭の内側に白目を描く
次に、いま描いた輪郭の内側に、ほとんど白に近いグレーで白目を描きます。ここでのポイントは、さっき黒くペイントされた輪郭のモールドラインを潰さず、その内側ギリギリに白目を描くこと。ここで細ーく残した輪郭の黒茶が、のちに上下の睫のラインになるからです。
なんか途端に難易度が上がってますが、失敗してもリカバーは効くので大丈夫! とりあえず、101番「ホワイト」に211番「ライトグレイ」を少量加え、ラーミアン・メディウムで5:5ぐらいに薄めましょう。ミニチュア専用塗料なら、隠ぺい力は心配ご無用です。

こういう繊細な局面で重要なのは、筆の持ち方。軸の筆先近くを持つ(ウィンザー&ニュートンのシリーズ7で言えば、軸の黒いトコと銀色部分の境目を握るカンジ)だけで、操作性が格段に向上します。
その状態で息を止め、まずは白目の上下のラインの片方、次にもう片方を描くように、筆先を走らせてスパっと描くのがコツ。筆は筆先の描く軌跡通りに塗料を置いてくれるワケですから、ビビって筆先を何度もツンツンすると、かえってガタついてしまいます。キレイなラインが欲しかったら、思いっ切りが肝要です。

また、もしここで白目が睫(まつげ)のラインを潰してしまったら、さっきの黒インク+茶色で、改めて描き直します。ただし、今度は白目側のラインをキッチリ出すことを意識して、そのぶん瞼(まぶた)側には、いくらはみ出しても気にしないコト。あとで肌色塗るときに、いくらでも修正できますからね。

3:黒目の輪郭を描く
白目が描けたら、次はいわゆる「黒目」。イプシロンの目は明るいバイオレットなので、早速紫を……と言いたいところなんですがー。白目のうえに明るい目の色をただ置いても、なんだか夢でも見てるような、締まりのない目になっちゃうんですね。
これを解決するには本物と同様、紫の周りに黒っぽい輪郭を置くのが大事。そこでまず、ブラックインクを使って瞳の輪郭を描いてやります。このインクなら、こういう「描きモノ」は得意中の得意ですから。
ここでのポイントは、黒目のサイズと向きです。まず前者に関しては、白目の中にまん丸を描いてはダメ。「ビックリしたなぁもう!」みたいな表情になっちまいます。これは黒目のサイズ誤認が原因ですね。鏡でご自分の目をよーく見るとお分かりになりますが、人間の黒目は「上下が微妙に瞼に隠れるぐらい」の大きさですので、まずはこのサイズ感を意識します。
一方の向きですが、やはり「キリコ憎し!」のイプシロンだけに、上目遣いにキッと睨み付ける表情が相応しい。そこで今回は、黒目の上側が上瞼に隠れ、下のラインは瞼に接しない、いわゆる「三白眼」にしてみました。左右はミニチュアのポーズにあわせ、視線をやや左向きに。

ここまで決まったら、とりあえず描いてみましょう! 最初は白目に「チョン」と黒の点を打って「このへんかなぁ」とアタリをつけ、適宜位置を修正しながら、下側の丸いカーブを描いてやります。この時、上瞼側に黒がはみ出すぶんには、あとから修正できるのでノープロブレム。額(ひたい)方向から筆を入れ、とにかく黒目の下に白目を残しつつ、カーブを描くことだけに注力してください。

4:黒目の内側に紫を塗る。
続いて、いま描いた黒目の内部に紫を塗ります。ここでも輪郭の黒ラインをなるべく細ーく残すのと、黒目の下側ほど明るい紫になるように、色にグラデーションをかけるのがポイント。まずは118番「ポイズンパープル」に白をほんのちょっと足したモノを、内側全体に塗ってやりましょう。次に、この色にさらに白を加え、ラーミアン・メディウムで5:5ぐらいに薄めた絵の具を、黒目の下側にのみ塗装。上瞼側にならナンボはみ出してもイイのは、さっきと同じです。かなり細かな作業になりますが、筆の先端をよく見て、穂先のコントロールに集中しましょう。

5:紫の目の中に黒で瞳孔を描く
黒目が無事「紫目」になったら、その内側に丸く瞳孔を描きます。使うのはもちろんブラックインクです。ここでも、瞳孔の大きさには注意してください! 点で打ってしまうと、これまたビックリしたような顔に見えてしまいます。筆は立てるのではなくやや寝かせて、額の側からアプローチしつつ、先端の軌跡で丸いカーブを描きましょう。三白眼に塗っていますから、上瞼の下に円が半分ほど突き出すカンジで。

6:白でハイライトを描く
目の仕上げは、白のハイライト。これはなるべく小さく、かつキレイに発色した「点」で描くのが効果的ですから、今までより若干絵の具を濃い目に溶いて、筆を立てて「エイヤッ!」っと打ってやりましょう。位置は光源をどの向きに想定するかで違いますが、左右どちらかの斜め上が定番です。

7:睫(まつげ)のラインの修正
最後に、これまで無法地帯だった上下の瞼を、肌色のベースカラーで塗り直します。当然はみ出た黒を潰すように、かつ白目とのあいだに一筋ラインが残るように気を配りましょう。

これでやっとこ、目のペイントは完了です。とはいえ、どうにも細かい作業なので、「そんなんできるかぁー!」って方も、いらっしゃったり? ではそんな皆さんに、「どんな難しいペイントも絶対に成功する秘訣」をお教えしましょう。それはっ!!
「成功するまで塗り直せば、失敗にはならねーぢゃん?」

いや待ってヤメ……石はヤメて石h(中略)ええと、その、アレですよ。コレ冗談でもなんでもなくて? とくに目とかは細かくて難しいんで、私もしょっちゅう失敗してるんです。それでも何度かやってれば、なんかの拍子に巧くいくことはあって、その時の感触を覚えておくことが、これ即ち「上達」の正体である、みたいな。なので、勇気のある方にはぜひ挑戦して頂きたいのであります。

因みに失敗した場合、プラモデル用ラッカー塗料の薄め液にドボンしてやれば、塗装は落とすことが可能です。厳密には「専用塗料が溶ける」のではなく、その下のサーフェイサー層が溶けることによって、専用塗料の塗膜が「ふやけて剥離する」んですけど、塗り直しOKなのは同じコト。ひとつじっくり取り組んでみてください。

また、上記はあくまでも「ちゃんと目を塗るなら」必要となる工程です。いくつかすっ飛ばして簡略化してもイイですし、眉骨の下を黒く塗っただけでも、「モヒカンがヒャッハーしてる世紀末の救世主さまが怒ってる時の顔」みたいにするコトは可能でしょう。私はやったことありませんが、ペンの類で黒目を入れることだって(サイズと位置に気をつけて、瞼にはみ出す前提なら)、できるかも知れませんしね。ご自分の楽しみ方にあわせて、いろいろ試してみてください。


 

以上、岡島正晃による『1/20イプシロン製作記』の5回目はここまで。
次回はグラデーションについて。
筆塗りによるグラデーションについて、「レイヤリング」という技法の解説を交えて紹介いたします。

 

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その6~ はコチラ

 

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その1~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その2~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その3~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その4~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その7~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その8~ はコチラ

•プロの秘技を完全公開!『1/20イプシロン』製作記』 ~その9~ はコチラ

 

K_NAGAMI(永見 浩士)

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